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ステンレスの微細加工事例紹介

ステンレスとは

ステンレスは、錆びにくい金属として馴染みのある合金です。鉄を主成分として、クロムが含まれています。

ステンレスの特徴

ステンレスは耐食性(さび)に強く、加工性が高い点や耐熱性が高い点、強度が高い点が特徴です。

特に、さびに強い点を活かし、屋外の屋根材や手すりなどに使用されている他、洗濯機や食器・流し台などの水が使われる場所にも使用 されています。

クロム含有量が10.5%以上、炭素含有量が1.2%以下の金属をステンレス鋼と定義します。含まれているクロムが働くことで、金属表面に不動態皮膜が形成するのが特徴です。本体を保護する働きがあることで、高い耐食性を持ちます。ただし、決して錆びない訳ではありません。しばしば「錆びることがない金属」として紹介されるステンレスですが、湿気の高い場所や塩分の多い場所では腐食が進みます。

また、自動車など屋外で使われる輸送機器などにも使用されていることから、身近な金属と言えるでしょう。

鉄より強度が高く、500度までは引張強度が変化しません。そんなステンレスにはマルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、析出硬化系等、さまざまな種類に分類できます。また、リサイクル性の高さも特徴です。使用済みステンレスはおよそ8割から9割回収されています。他の金属との差別が容易な点や腐食に強い点からサビにくい点から、回収されたスクラップはほぼすべて再利用されています。

参照:有限会社小林製作所

ステンレスの種類

マルテンサイト系ステンレス鋼

マルテンサイト系ステンレス鋼は、焼入れ・焼戻しなどの熱処理を加えたステンレス鋼をいいます。素材が磁性を持っています。

マルテンサイト系ステンレス鋼は、焼入れ・焼戻しすることで強靭性が高まっているほか、高い耐摩耗性・靭性もあります。代表的な鋼種はSUS410・SUS440など。高い強度や摩耗性を有することから、刃物やベアリング部品医療用器具まで、さまざまな用途で使われています。なお、クロムの含有量は他のステンレス鋼よりも少ないため、耐食性が高いとはいえません。

一方で焼入れ・焼戻しを施していない状態のマルテンサイト系ステンレス鋼は、強度が低くとても壊れやすい状態です。そのため、通常は焼入れなどの処理を行い、各種製品で用いられています。熱処理したマルテンサイト系ステンレス鋼はとても硬く、フェライト系やオーステナイト系と比べても強度があります。

フェライト系ステンレス鋼

フェライト系ステンレス鋼は、モリブデンや銅が追加されているステンレス鋼です。安定した結晶構造を持つため、焼入れなど熱処理で硬化することがありません。使用する際は熱処理を加えず、そのままの状態で用います。一定の温度下にしばらく置いた場合、クロムの濃度によって二相に分離してしまいます。ステンレス鋼が脆化するため、処理する際の温度には注意が必要です。

代表的な鋼種はSUS430・SUS444などがあります。他のステンレス鋼と比較して強度が低いため、強度が求められる部分・用途での仕様には適しません。一方、溶接や加工がしやすいメリットがあります。高い耐食性も持つため、建築物の屋根や外装などで使用されています。

耐食性はマルテンサイト系とオーステナイト系のほぼ中間といえます。ただ、ニッケルが含まれていませんので、オーステナイト系で見られる応力腐食割れが少なめです。鋼種によっては、より耐食性が強化されています。

オーステナイト系ステンレス鋼

オーステナイト系ステンレス鋼は、ニッケルが含まれているステンレス鋼です。ステンレス鋼の中では耐食性が高く、溶接もしやすいため、溶接を用いる部分や構造に使用されています。他にも、自動車の部品や化学装置など、幅広く用いられています。

オーステナイト系ステンレス鋼の鋼種はSUS303・SUS304・SUS316などがあります。中でも代表的な鋼種はSUS304で、使用されるケースが多く見られます。切削加工においては、SUS303がよく使用されています。なお、磁性を持たない素材ですが、加工により持たせることが可能です。

オーステナイト系ステンレス鋼の注意点としては、加工硬化が挙げられます。加工箇所が他のステンレス鋼に変化することで、加工箇所が固くなってしまう場合があります。加工が難しくなるため、取り扱いには注意が必要です。また、一定の温度下に長時間置くと耐食性が低下し、塩素イオンによって応力腐食割れが発生します。

析出硬化系ステンレス鋼

析出硬化系ステンレス鋼は、析出硬化処理によって高い強度を持つステンレス鋼です。マルテンサイト系と同等の強度を持つため、船舶や航空機の耐食性・強度が求められる部分に用いられています。代表的な鋼種はSUS630・SUS660ですが、ステンレス鋼の中でも高価な部類に入ります。製造も難しいため、用いる場合はコスト増加に注意しましょう。

ステンレスの用途

ご紹介した特徴から、ステンレスは我々の生活の身近なところに多々使用されています。例えば家電。洗濯機や食洗器等水を扱うものには、ステンレスが使用されているケースが多いです。冷蔵庫や炊飯器、電子レンジといった低温・高温での使用が想定されるものにも使用されています。ゴルフクラブや釣り具、スキー用具といったレジャー用品からフォークやナイフ等、食器にも使用されています。

他にも魔法瓶や給湯器、浴槽など水を用いる場所ではステンレスの採用率が高いです。精密機器から輸送機器、産業機器や建築など幅広いジャンルでも用いられています。大きなもので言えばトンネルの内装板や太陽熱利用機器、ダムの水門や構造材など、水がある場所や水から守りたい場所にステンレスが使用されています。

ステンレスの加工の難しさ

ステンレスは、これらの優れた特性を持っているがゆえに、他の金属に比べ加工が困難とされています。

理由として、加工方法によっては硬くなってしまうことから、難削材と言われます。

プレス加工による強い衝撃や溶接後に急激に冷えることで、硬化が起こってしまいます。

またステンレス加工は、種類によって加工方法が異なります。ステンレスには多くの種類がありますが、それぞれ微妙に加工方法が異なるので、ステンレスの種類に応じた加工材料を用意しなければなりません。一度加工硬化を起こしてしまうと、元に戻して再度加工することは不可能とされていますので、素材を無駄にしてしまいます。

熱伝導率の悪さも加工が難しい理由の一つです。熱天道率が悪いことから熱が工具にとどまりやすいという特徴があります。結果、工具の消耗が激しく、破損リスクが高いです。さらには熱を帯びた工具によってさらなる工具摩擦をもたらし、加工熱を発生させるループとなることで、工具だけではなくステンレスそのものも変形させてしまいます。他にも溶接する際に急激に冷やすとステンレスが割れてしまうリスクもあります。

ステンレスへの加工対策

急激な温度低下に弱いステンレスの加工対策として、焼き戻しをおこなうなどいくつかの工程に分けて温度調節をおこなっていく必要があります。

このように、急激に冷やさないに熱処理をする必要があるため、加工者の技術やノウハウが必要になります。

その他で挙げられる対策としてあるのが、ステンレス加工に適した工具を選ぶことです。ステンレスの強度に耐えられる強度の工具を使用することで工具の摩耗を防ぎながらの加工を可能にします。刃への負担の小さいもの、穴を開ける場合にはデュアルリードドリルもおすすめです。また加工しやすいステンレスを選ぶ点も重要です。

またステンレスにもいくつか種類がありますが、フェライト系のステンレスは比較的加工しやすい素材だといえます。熱伝導率が低い点もステンレスの特徴ですが、エアーの吹付や水溶性クーラントを使用することで、加熱を抑えての加工を可能にします。このように、加工方法に気を配ることで、多少なりとも加工が容易になりますので覚えておきましょう。

ステンレスの微細加工事例

ステンレス微細加工(ギア)

ギア
引用元HP:微細加工.com
http://www.bisai-kako.com/metal/sus/

・寸法:5×5×7

・材質:SUS303

・加工:微細加工

・精度:φ0.6g9

・備考:一部放電ワイヤカットを併用して加工

注入器

注入器
引用元HP:株式会社フォワード
https://www.forward-suwa.com/work/micro-hole-injector/

・材質:SUS430

・穴径:0.12〜0.13mm(先端)

・備考:肉眼では確認できないような微細穴を、回転数など切削加工条件を見極めることによって微細加工をおこないました。

掘り込み切削

・材質:ステンレス

・寸法・精度:12×10×4(Φ1)

・備考:ステンレス鋼をくり抜き、Φ1の穴を貫通させました。

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微細加工を依頼する前に知っておきたいポイント

微細加工会社の選び方

微細加工会社を選ぶ際の大前提となるのが、「ISO9001認証を取得しているかどうか」と「工作設備が充実しているかどうか」です。

ISO9001認証は、厳しい審査基準をクリアした工場や会社だけに与えられる認証なので、これがあるだけでその会社は優れた技術力を持っているという証拠になります。また、工作設備の充実については、微細加工にはそれ専用の設備や機会が必要なので、設備が豊富な会社は、単純に対応できる加工の種類も多くなるのです。

微細加工会社には「精度」を重視する会社と「納期」を重視する会社があります

精度優先の会社は、特殊な工作設備や検査機器によって、加工が難しい依頼にも対応できます。しかし、高精度な加工依頼にも対応できる反面、短納期での製造が難しい傾向にあります。

納期優先の会社は、充実した工作設備によって単品から大口ロットの製造に一気に対応でき、結果として短納期での製造を可能とします。しかし、短納期で対応できる反面、常に高精度なものを製造できない場合もありますので、注意が必要です。

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微細加工に対応する会社には大きく「精度」と「納期」を重視する企業に分かれます。自社の目的を明確にし、目的に合った企業選びをするようにしましょう。

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精度を重視するなら

いくら高精度の加工機器で加工したとしても、検査測定器で正確に検査して問題ないと判断されてはじめて高品質な製品の納品が可能となります。
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